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「アセストリディゥム・ダイクロマム」の紹介

こんばんは。ファロ支部ybkjです。

台風が急接近してきたので、急遽、水換えをしてみました。。。
産卵を促すつもりだったのですが、「ファロウェラ」には全く効かないようで、至って普通に過ごしています。。。その脇で、やたらとそわそわし出したオトシン・ネグロ。。。

あのぉ~、今回は、君たちじゃないんですけどぉ~。。。

と、水槽に向かって、うなだれてしまいました。。。上手いこと行きませんね。。。


さっ、気を取り直して!!



今日は、ファロ支部でも“腫れ物を触るように”飼育しているグリーン・ファロウェラこと、Acestridium dichromum「アセストリディゥム・ダイクロマム」(こりゃまた舌噛みそうなお名前で・・・)を、おさらいしておこうと思います。


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Acestridiumが初めて文献に登場したのは、1911年(Haseman)のことでした。その時、3種類の個体が発見されたとなっていますが、全部まとめて「アセストリディゥム」だったようです。。。その後、1970年にHassurによって報告されるまで、文献に登場することはありませんでした。


現在、4種類のAcestridiumが文献に掲載されています。

Acestridium discus Haseman, 1911 
Acestridium dichromum Retzer, Nico & Provenzano, 1999
Acestridium martini Retzer, Nico & Provenzano, 1999
Acestridium colombiensis Retzer, 2005

☆印 : 流通している(もしくはしていた)種類。
★印 : 日本でファロ支部が流通確認出来た種類。







販売名には「ファロウェラ」とついていますが、以前にも説明しましたように、このお魚さんはFarlowellaではありません。よく言われていることですが、この「グリーン・ファロウェラ」はむしろオトシンに近いとされています。。。確かに分類学的には、ファロウェラよりはオトシンクルス、もっと厳密に言うとヒポプトポマに近いようですが、飼育していると、その生態や行動は、やはり「ファロウェラ」に似ていると個人的には思っています。


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A)Acestridium martiniとの関係。

A.dichromumA.martiniは、どうやらその生息域をシェアしているようです。「A.ダイクロマム」が獲れれば、必然的に「A.マルティニ」も混ざるようなのです。しかし、実際には「A.ダイクロマム」ばかりが多く流通しています。その理由は?

至ってシンプルです。「A.ダイクロマム」は鮮やかなグリーンなのに対して、「A.マルティニ」は、地味な茶色だからだと考えています。つまりは、観賞魚としての価値・・・。。。
実は、ファロ支部にその“地味ぃ~”な「A.マルティニ」が居たんです(過去形)。。。とあるショップで混じっていたのを買いました。。。(が、死にました・・・)

正に兄弟関係のこの2種類ですが、細かい部分でだいぶ性格の違う種類のようです。生息域が同じと書きましたが、「A.ダイクロマム」が、中層から上層の水草が青々と茂り、水流で棚引いている場所が好きなのに対し、「A.マルティニ」は、中層から下層の水草の茎や枯葉が積もった場所、沈んだ流木を好むようです。そういった見地からも体色の違いが判りますね!!

簡単な見分け方です。
A.dichromum 体幅が比較的広く、円盤状鼻先が大きい。
A.martini  体幅が比較的狭く、円盤状鼻先が小さい。




B)名前の由来とその意味。

A.dichromumの「di」はギリシャ語で「二つ」を意味し、「chromum」は「色」を意味しています。これは、このお魚がバックグランドの環境色に応じて、その体色を変化できる性質から来ています。とはいっても、読んで字のごとく“たった”の「2色」だけです・・・。。。その色は、「緑」と「茶」のみです。ファロ支部緑倶楽部でも、例えば、流木の上や枯れた水草の上などでは、完全とは言わないまでも「くすんだ汚ねぇ~緑」に変身する時があります。ただ、完全な「茶色」に変化するのは観察出来ていません。。。

このカモフラージュ効果というか、体色を環境に合わせて変化させる習性は、ロリカリア科のお魚多しと言えども、このAcestridium dichromumだけだそうです。



C)“スーパー”グリーン・ファロウェラについて。

最近、こういう誇張した販売が流行っているようで疲れます。。。
まぁきっとインボイスからして“スーパー”が付いてくるのでしょうから、ショップや問屋さんを責める訳には行きません。。。
で、確かにスーパーが付くだけあって、緑もより鮮やかな固体なのですが、上述のように、環境に合わせてある程度、体の「緑」を変化させますので、ずっと“スーパー”であることは無いかもしれませんので、購入する際は注意が必要です。



D)産地。

文献掲載研究の為に採集されたサンプルは、ほとんどがベネズエラで獲れたようです。
オリノコ川の支流Rio Metaの入り口付近、Rio Casiquiare, Rio Negro支流、
Rio Amazonas、 Rio Atabapo、そしてRio Sipapo。。。
広い範囲で生息が確認されているようですから、今後も流通が期待できそうです!



E) 生息環境。

pH : pH4.5 ~ 5.5
水温 : 25.0℃ ~ 29.0℃
水流 : ある程度の流れ
      透明度が最低でも2mの、クリアウォーター域、もしくはブラックウォーター域。
ファロ飼育難易度 : ★★★★★+★ (★が多いほど飼育難易度高い)


D) 実勢。

販売サイズ : 3cm ~ 5.5cm SL
販売価格  : JP¥4,000 ~ JP¥6,000 (ファロ支部調べ)
入手しやすさ : ★★★★☆ (★が多いほど入手困難)
           現在、輸入は「K2」便のみ。


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※ 飼育のポイント。
ファロ支部でも未だにきちんとした条件を確立できずに居ますが、なぁ~んとなく摑めてきたような気はしています。。。なので、自信がある「ポイント」をいくつか、そぉ~っと教えちゃいますよー!

◎水質はめちゃくちゃ低pHで、流れを強めに演出した方が良いようです。
◎水温はやや高めでOKですが、溶存酸素をしっかり確保。
◎水草は育ちが良く、細身の葉を展開するものを。
◎溶けた水草はそのまま放置。(エサとなり、タンニンの元となります)
◎混泳は基本的にNGです。ただし、グリーンダータや小型カラシン、ボララスならOK。
◎「ブラックウォーターの素」は欠かせないかも???(実験中)

肝心なエサですが、ブラインは積極的にたべるようになりました。が、その他のエサには目もくれません。。。
そんな状況でもエサを食べ過ぎると『内臓が腐る独特の病気』があるようです。。。
コケも重要かと思いますが、今のところ、コケが無くても飼育出来ています。




いかがですか?あなたの水槽にも「緑」の爪楊枝・・・。。。




参考文献;-

Michael E. Retzer, Leo G. Nico and Francisco Provenzano R. (1999)
Ichthyological Exploration of Freshwaters Volume 10 Number 4 : 313P
「Two new species of Acestridium (Siluriformes: Loricariidae) from southern
Venezuela, with observations on camouflage and color change」


Michael E. Retzer (2005)
Zootaxa 972: 1 - 6 (2005)
「Description of a new species of Acestridium (Siluriformes: Loricariidae) from
Colombia」

by ybkj | 2006-08-09 01:42 | 緑倶楽部

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