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「オトシン・ネグロ」のススメ 第二夜『自給自足』

皆さん、こんばんは。『枝支部」ybkjです。

『第一夜』では、「オトシン・ネグロ」について、基本的な説明を試みました。結局なにが言いたかったのか?と言いますと、

「オトシン・ネグロ」と「オトシンクルス」は全然違うのじゃ~(声高、

ってことなんですけどね・・・。





では、早速、、、今宵『第二夜』、「オトシン・ネグロ」をもう少し突っ込んでクローズアップしてみたいと思います。





『枝支部』は、だいたい1年か2年に一度、人工的に「オトシン・ネグロ」を殖やしています。「オトシン・ネグロ」の自給自足ってやつです。

で、今年もやりました。。。
産卵を誘発させる方法は、いつも『枝支部』式“産め産め攻撃”「オトシン・ネグロ版」(秘密よ~ん・・・)を使うのですが、ほぼ100%の確率で産卵させる事に成功しています。。。まぁ~ほんと、こんな飼育者の身勝手に、けな気に付き合ってくれる「オトシン・ネグロ」達には、心から感謝しなければなりませんな。。。

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この環境で、親魚の産卵から稚魚の育成までこなします。今回は1回の産卵で100匹ほど採れました。今年の目標は70匹確保でしたので、この“一腹”で十分。

産卵を誘発させるプロセスや方法論、またその後の育成方法等については、いろいろな考え方がサイバーな世界にあふれています。きちんと育て上げる事ができるのなら、どのような方法でも“正解”だと思います。。。扱う相手が生き物ですから、答えは1つだけではありません。。。(算数のようにはいかない)
それでは的を得ませんので、ここでは“『枝支部』的産卵・育成の秘訣”なんぞを、基本知識に科学的アプローチを織り交ぜながら、何点かポイントを挙げておきたいと思います。。。

※ 産卵用として使う専用水槽は、ろ過がしっかりと安定しているのが前提条件です。





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孵化して40日前後の「オトシン・ネグロ」。水槽の隅に集まる傾向があるようです。。。体格にはっきりとバラつきが出始めるのもこの時期から・・・。

1) 産卵させる親魚「オス:メス」の比率について。
ほんとに色んな意見がありますね。。。「オス:メス=3:1」という方もいれば、逆に「オス:メス=2:4」と言う方もいらっしゃいます。かと言えば、いやいや「オスとメスは同数に限る!」と言い張る“強情アクアリスト”も、知っています(爆。。。
そこで私なりに、まぁ~いろいろ試してみたのですが・・・、その結果は驚く事なかれ、「どの比率でもオスとメスが居れば産むじゃん!」でした(核爆。。。
ただ敢えて一言添えるならば、本種は“乱交パーティー”しますので、「オス」「メス」ともども複数匹で産卵させたほうが結果は良好です。


2) “やる気”のある「オス」が大事。(産卵のきっかけ作り)
結局はどんなに「メス」のお腹がはちきれそうになっていても、“やる気”のあるオスがいないと産卵までたどり着きません。いかにして“やる気”のある「オス」を見極めるのか!が、産卵に向けての大きな分かれ道となります。
「オス」が水槽内でそわそわしだして右往左往を始めると、「メス」は、それを見てそそられるんですかね・・・。または「オス」が産卵を誘発するホルモンみたいなものを分泌するのでしょうか。「オス」が上下左右に激しく泳ぎだすと、「メス」もそれに同調し始めます。そういう行動が観察されたら、産卵はもうまじか!!
後は、「産卵スイッチ」が入るのを待つのみです。ついでに、、、「オス」が激しく泳ぎまわり、「メス」がジタバタしだしたら、“水換え”はご法度ですぞ!
水換えがいいように作用する時も間々ありますが、このタイミングでの水換えは、むしろ産卵行動をやめてしまう原因になり兼ねません。。。

※ オスがそわそわし始めるきっかけ ; 水位の変化/水温の変化/水質の変化/低気圧の接近/溶存酸素量の低下/突然の環境変化・・・、など。
※ 産卵スイッチとなりうる要因 ; 水温の上昇/朝日などの光/水槽水の濁り/潮の干満/溶存酸素量の増加・・・、など。

産卵に至るまでには、「そわそわ・じたばた」し始める“第1フェーズ”と、「産卵スイッチ」の“第2フェーズ”があります。
フェーズ間のタイムラグは、早いときで数時間、遅いと数日間掛かってしまうこともありますが、第1フェーズを迎えたら、水槽のコンディション維持を第一に心がけ、水質が急変しないよう、なるべく手は加えないで静観しましょう!(放っておくぐらいでちょうど良い)




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孵化して50日。もうすっかり親と同じ体形ですが、体長はまだ15mmSL。。。

3) 産卵行動。
「オス」と「メス」が“そわそわ”・“じたばた”と水槽をところ狭しと泳ぎ廻り始めると、1日~1週間のうちに『 U 』ポジション(私が勝手に呼んでるだけです。。。)が観察できると思います。これは「コリドラス」で言うところの『 T 』ポジションと同義なのですが、この行動が観察できたら、後はもう、水槽のそこらじゅうに卵が産み付けられているのを確認するだけです(爆。
「オトシン・ネグロ」は、俗に言う“エッグ・スキャッタラー”(卵産み散らし屋)なので、水槽いたるところ、手当たり次第に産み付けてしまいます。。。産卵は夜明け前に実施されることが多いようです。
『枝支部』では産卵が確認できたら、速やかに親魚を掬い出してしまいます。


4) 産卵数と歩留まりについて。
一回の産卵で産みつける卵の数は約50個~150個程度です。そのうち、有精卵が80%ほどでしょうか・・・。しっかりと稚魚を確保したい場合は、産卵を確認した後、なるべく速やかに親魚を隔離、もしくは掬い出して下さい。親魚は激しい産卵行動した後で空腹です。体力を回復するために、即座に食卵を始めてしまいます。本当に、あっという間に卵がなくなってしまいますので、とにかく早めに親は取り出して下さい。
孵化に要する時間は、通常25℃~26℃の水温で40時間~60時間掛かります。孵化の確率は有精卵のうち99.9%と考えて間違えないと思います。
その後の成長確率は、育成する水槽のろ過の状態で明暗がくっきりと分かれてしまいます。ろ過が安定しているならば、80%~100%の確率で成魚サイズ(30mmSL)に育ちます。

※ 撒き散らし型産卵 ; 単独で行動し、生涯同一水域で生活するといわれる本種にとっては、一箇所にまとめて産むよりも出来る限り広範囲に渡って
  卵をばら撒く方が、種族を繁栄させるのに重要なのではないでしょうか。。。






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もうそろそろ現場投入(実戦配備)できるかな?

5) エサについて。
これも皆さんいろいろと工夫していらっしゃいますので、何が一番良いのか一概に言えません。。。稚魚が食べれば、それで良いと思います。
『枝支部』は、最初の孵化を確認してから48時間後、多少ヨークサックが残っていたとしても第1回目のエサを与え始めます。与えるエサは、自家製の「冷凍ブライン」のみ。冷凍にしてから与えるのは、活きているブラインは水中を泳いでしまい、効率が悪いからです。また、ウィークディは何かと忙しいので、1週間分程度を一気に湧かして冷凍保存しています。。。ちなみに冷凍したからと言って、喰いが下がる事はありません。
一つ注意が必要とするならば、植物質のエサには拘らないことです。上の写真のように流木の1本も入れておけば「リグニン」補給は問題ありません。それよりも、この時期は、良質のたんぱく質をふんだんに与えた方が後々の成長に良い影響を及ぼすと考えています。
24時間絶やす事なくエサを供給できれば良いのですが、実生活上ではほぼ不可能です。ですので、朝・昼・夕方・夜の4回(最低でも3回)、欠かさず与えられれば理想ですね!

6) 寿命について。
『枝支部』で繁殖した「オトシン・ネグロ」の寿命は、平均1年半~2年ほど。。。中には1年持たずに死んでしまう個体や、天寿を全うして3年以上生き続ける個体も居ます。しかし、メスに限って言うと、産卵させた個体は寿命が極端に短くなるような気がします。特に統計を取ったわけではないのですが、産卵を無事終えて、本水槽に戻してあげると、死んでしまうメスをたまに目にします。。。
いつの世もどの生き物も、子孫を残すという行為が命に関わるリスクを背負っている、ってことなのでしょうか・・・。
今のところ、F4の個体が元気に働いてくれていますが、今年は新たにオスを3匹購入しました。そのうちの2匹を産卵に参加させ、血が濃くなり過ぎる(そこまで気にすることは無いと思いますが・・・)のを予防しました。
生まれて来た「オトシン・ネグロ」の「オス:メス」の比率ですが、『枝支部』の統計で言うと「65:35」ぐらいでしょうか・・・。即ち、大体、「オス」2匹~3匹に「メス」1匹ぐらいの感じです。





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ネグロ忍法「木化け」の術!うりゃ~。

「オトシン・ネグロ」を飼育する事・繁殖させる事、そのメソッドは「ロリカリア科魚種の飼育・繁殖」の基本であると考えています。本種の繁殖・育成をマスターする事によって、色々な種類の「ロリカリア」に挑戦できるようになる、と信じてやみません。。。
「オトシン・ネグロ」がある意味“究極のロリカリア”と考えるのは、ろ過が安定している水槽である限り、稚魚の育成が容易だからです。また、そのプロセスとアプローチの中で、実に様々なことを飼育者に教えてくれるのです。

皆さんも、健康な「オトシン・ネグロ」を飼育していたら、ぜひ「繁殖・育成」に挑戦してみてください!!





「オトシン・ネグロ」に限った事では無いですが、閉鎖環境(水槽)で繁殖できる、もしくは出来るであろう全ての魚種は、乱獲や環境破壊、地球規模の天候不順等で手遅れにならないうちに、人工繁殖の技術を個々に確立していくべきだと思います。。。別に専門の学者さんや業者さんでなくても、我々、素人でも微力ながら出来ることってあると思うんです。
“我が家”の水槽で殖やすことの喜びや、ちょっとしたミスで簡単に死んでしまうはかない小さな命の重み・・・。小さな事に一喜一憂するのも大切なことです。
そして、輸出規制(噂?)や環境保護の観点からも、インブリードという考え方は近い将来、重要な意味合いを持って来るだろう、と『枝支部』は考えています。





茶色くて小さくて、警戒心が強くて、そして、水槽内で邪魔にならない存在。。。いつもそばに居るのにあまり気に止めない、、、そんな「オトシン・ネグロ」・・・。


そういえば、「雀(スズメ」)に似てなくも無いよなぁ~。。。




「オトシン・ネグロ」のスズメ・・・。




お後がよろしいようで(痛。。。










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「L134」(クィーンインペリアルタイガープレコ/「ペコルッティアsp.“リオ・タパジョス”」のオス。
今回、この子が産卵・育児をしたオスです。立派に生え揃った“スネ毛”がとても強そうなイメージなんですが、『枝支部』プレコ水槽の中では実は臆病者。。。
下の写真の「L204」ナンバー2にいつも追い立てられています。ついでに、同居の「L066」(キンペコ)にも、お気に入り洞窟を奪取されてしまいました・・・。

次の“産め産め攻撃”の時も君を抜擢しますので、めげずに頑張ってください!期待してますよ!おとーさん!!



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上述の「L204」(最近ではエンペラー・ペコルティアが最も一般的な販売名?)。
『枝支部』プレコ水槽の中にあっては、ナンバー2的な存在ですが、同じ「L204」にもう1匹すっげー強烈な子が居て、いつもその子を気にしながら、ビビリながら生活しています。。。
んで、この個体、ずーっとオスだと思っていたのですが、最近、よく判らなくなってしまいました。一体、オスなのかメスなのか・・・。中途半端。。。生えているようで生えていないような体毛・・・。どっちなの?

この写真、強烈「L204」ナンバー1の隙を見計らって、プレコタブをがっついてるところです。。。がっついている割には、目だけはしっかり警戒して、ナンバー1を追ってるのが判ります。いつ怒られるか、気が気でないんでしょうね・・・。

by ybkj | 2008-07-05 00:36 | 茶色小鯰

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